一歩踏み込む日経新聞まとめブログ

何気なく日経新聞を流し読みしていたサラリーマンが、あまりのアウトプット機会の少なさから、記事の内容に一歩踏み込んで色々書いてみようと始めたブログです。

ファミマとドンキの蜜月について

しばらくお休みしてしまいましたが、今日は2018年12月22日(土)の朝刊から、ユニーファミリーマートホールディングスの記事を取り上げたいと思います。

 

ユニファミマの3~11月、事業利益2割増

 

 記事サマリー

記事のタイトルはユニファミマの増収について触れられておりますが、記事の結びでは先日のドンキTOB失敗によるファミマ株価の下落についてまでコメントされておりました。サークルKサンクスからの看板替えの際の不採算店舗の閉店、商品内容の見直し、惣菜の新ライン好調、ドンキとのコラボ店が好調等で前年比2割増益と好調を維持しているユニファミマですが、直近のドンキホーテホールディングス株のTOB失敗により市場の反応は一時9%安と冷ややかなものになっております。国内のコンビニエンスストア市場はもはや成長産業ではなく、ドンキのような改革をおこすことが出来る企業の血が入らないと今後の成長曲線は描けないのか、かなり厳しい経営のかじ取りを迫られているようです。 

 登場企業

簡単に登場企業にも触れておきます。ユニーファミリマートホールディングスは、誰もが知っているコンビニ「ファミリーマート」の親会社です。

ユニーは、名古屋に本社を置く総合スーパーを運営する企業であり、コンビニ事業ではサークルKとサンクスを運営しておりました。2017年にファミマがユニーを買収、全国に展開していたサークルKサンクスの看板がファミマに変わっていったのが記憶に新しいかと思います。

ドンキホーテホールディングスも誰もが知っている激安の殿堂ドンキホーテの運営会社で、現在29期連続増収増益を前期で達成し、2020年をターゲットにしていた売り上げ1兆円の大台も、1年前倒しで来年の2019年6月期に到達する見込みであり、今や日本の小売市場でローソンに続いて第7位につけている絶好調企業です。

記事に至る経緯

2017年末にファミマが保有していたユニー株式をドンキ側が40%取得し、愛知県を中心に展開しているユニー店舗の一部をドンキ風に改装し、売り上げを伸ばしておりました。

そして2018年8月下旬に、ドンキ側からファミマ側にユニー株の残り60%の取得の申し出があり、反対にファミマがドンキの株式を20%取得するという、以前の戦略的業務提携に留まらない資本関係を結ぶ方向で検討しているという記事が出ることになります。

 

toyokeizai.net

 そして2018年10月に正式にドンキ側がユニーを完全子会社化する報道があり、ファミマ側がドンキに対して友好的TOBを実施することが明らかになりました。

何故ファミマ側はここまでドンキホーテホールディングスを頼り、ドンキ側はユニーを欲していたのでしょうか。

現在、日本の小売り市場は縮小化する一途を辿っており、小売市場が激戦化していく中で業界No.1、No.2のイオン、セブン&アイHDに対抗していくためにも業界3位のファミマがチャレンジする必要が出てくるのは必然です。今後上位を脅かしていくためにも、ドンキのディスカウントストア、ファミマのコンビニ事業、そしてユニーのGMS(総合スーパー)という流通3大事業をファミマの筆頭株主である伊藤忠を含めたグループ全体の強みとして総動員し、新しい小売の業態モデルをつくっていくという確固たる目標を持っているようです。

またユニーファミマでもGMS事業はドンキに任せて、コンビニ事業に注力したい意向を持ち、かつCVS(コンビニエンス)事業でもドンキとのシナジーを発揮していきたいと考えています。

 

【ユニファミマ中期経営計画】

2018年度の重点施策

2018年度は「新たな成長への攻めの強化」を掲げ、中長期的な成長に向けた基盤整備に注力するとともに、新たな収益事業の創出に向けた準備に着手します。このため、2018年度は投資の大半をCVS事業に振り向ける計画です。経営統合に伴う投資が一段落することから、2019年度以降は基本的に営業キャッシュ・フローの範囲内で投資を進める方針とする予定です。

www.fu-hd.com

 

【ユニファミマ2018年2Q決算説明資料】

http://www.fu-hd.com/ir/library/presentation/2018_2q_presentation.pdf

 

 

 

反対にドンキ側はというと現在420店余りを展開するドンキは、2020年度500店の達成を目指し、GMSやパチンコの居抜き物件への出店を続けてきた背景があり、ユニーを傘下に収めれば、物件を探す手間や多大な出店費用をかけずに500店舗体制を軽々と実現できることになります。しかしながら40%出資という立場では指揮が執りづらく、共同事業はドンキが想定したようなスピード感で進まなかったという事情がありました。

また業界内でシェアを拡大していきたい思惑はドンキ側ももちろん持っており、ファミマとのコラボで規模を拡大し、果てや伊藤忠商事とのシナジーで流通や海外展開でもメリットがあると判断しました。

そして2018年12月に思わぬ形でファミマの出鼻がくじかれることになったのが、ドンキへのTOBの失敗です。今回買い付け価格を6,600円に設定していたファミマでしたが、買い付け期間終了時では6,930円と市場が全く反応しませんでした。ユニーファミマはドンキHDの発行済み株式の20%強を買い付け、持分法適用会社にし役員を派遣する予定でしたが、TOB失敗で役員派遣は見送ることになります。これによりドンキとの資本提携が遅れることになり、ドンキ利益の持分法取込が遅れることが確定し市場が売り反応。ファミマは好調を維持しているのにも関わらず、株価が下落することになりました。 

 まとめ

ファミマ側は、TOB価格のプレミアム算定を誤っていたことを認めるとしてますが、今回のTOB失敗では、株式市場のドンキに対する期待の高さが如実に表れた形になったと思います。今後もファミマとドンキは業務提携をベースに資本提携の道を探っていくとしておりますが、ファミマそして伊藤忠商事は、ファミリーマート事業をドンキありきで戦略を立てていくのか、それとも別の方法で業界シェアを狙いに行くのか。今後も注目に値する企業だと考えます。

 

 

WeWorkはなぜ赤字?

今朝の日経ではこのような記事が出てました。

www.nikkei.com

 記事自体は東京のオフィスの空室率がバブル期以来の低水準になる中で、ウィーワーク(WeWork)の空室率の低さと月会費の高さから賃料支払いの見立てが立てやすく、WeWorkが入るオフィスの物件価格が高騰しているという記事でした。ここ10ヶ月で8拠点開設しているウィーワークの勢いも強調されております。

 

自分が唯一気になったのはWeWorkのEBITDAが1億6800ドルの赤字だったいうコメントです。日経記事では会員から徴収する利用料がビルオーナーに支払う賃料を下回る「逆ざや」に陥る可能性もありとの記載があり、さすがにそれはないと思うのですが、ベンチャー特有の広告費が先行しているといえども入居率が98%と高水準を保っている中でまだ赤字にとどまっているのはどうしてなのか、今後どういう戦略があるのか考えてみることにしました。

(数多の資金調達と企業価値は追いません。)

 

EBITDAとは?

⇒税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益を指します。

EBITDA│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券

 

 WeWorkは世界23カ国77都市で287拠点のコワーキングスペースを運営し、起業家やフリーランサー、企業などに貸し出している企業です。

日本ではWeWork Japanが設立されており、米ニューヨークに拠点を置くWeWorkとソフトバンクグループが17年に設立した合弁企業となってます。

日本では2017年2月に初拠点をオープン。現在都内で6拠点を運営し、登録ユーザー数は約6000人(18年9月時点)まで増えており、18年内には横浜、大阪、福岡の3都市にも進出する他、19年内にさらに拠点を増やし、30拠点以上を展開する計画とのことです。

 

次にウィーワークの事業を整理します。自分の前提知識ではコワーキングスペースの運営による収益のみと思っていたのですが、シェアオフィスの開発から設計、提案まで自社でやっているようです。

また彼らは大企業とアライアンスを締結するケースが往々にしており、大きな収益源としております。その最たる例がマイクロソフトとであり、マイクロソフトの社員は皆世界中のWeWorkを使用でき、かつマイクロソフトは同社の開発する新しい商品やサービスのモニターとしてWeWorkのメンバーから募集する提携も結んでいるようです。

(その他顧客の例:セールスフォース、DELL、KPMG、TriNet、バカルディ、マリオット、GM等)

 

定量情報は下記記事から少し取ることが出来ました。

2018年上半期決算では売上が7億6400万ドル、損失が7億2300万ドルと記載されております。これらは前年度同時期(3億6200万ドルの売上に対して1億5400万ドルの損失)を上回っております。

また昨年度の年間売り上げが8億2200万ドルだったので。2018年上期ではそれに届く金額をたたき出し、かつ2017年の売上が会員数も売上と比例して2018年2Q時点で26万8000人、昨年同時期が12万8000人なので倍増以上となっており、高い成長率を感じさせます。

 https://www.recode.net/2018/8/9/17671874/wework-q2-revenue-profit-loss-membership-statistics-adam-neumann

 

また下記ロイターの記事ではCFOのコメントで、

「Chief Financial Officer Artie Minson said WeWork has a mismatch in its profit and loss statement because revenues from sites that will open later this year and in early 2019 lag months behind expenditures made now.」

とあるように、2018年は新オフィスの開設費用が先行しているため損が先に出ているとコメントされております。

http:// https://www.reuters.com/article/us-wework-results/wework-revenue-and-losses-surge-in-first-release-of-results-idUSKBN1KU2KI

 

よって今はまだ種まき状況であるため費用が先行しておりますが、現在開発・設計段階の新オフィスの稼働が始まり今の高い入居率を維持できれば、費用と収入が逆転する可能性が高く、今後は拠点が拡大すればするほど大きな収益にあげていくと予想することができます。

 

最初の自分のイメージでは、フリーランスのためのコワーキングスペース、シェアリングオフィス機能としてベンチャー含む企業のオフィス賃料削減のための一つの手段としか捉えておらず、なんで競合他社が現れないか不思議でした。

しかしながら、WeWorkは転貸業ではなく、物件の鑑定からリース契約、設計、施工、運用までを、一貫して自社で行い、そして世の中のワークスタイルや企業の経営スタイルにまで影響を与えうる点はこれまでの不動産賃貸業ではないと感じました。

現在絶好調のWeWorkですが、どうやら費用先行型ビジネスになるため、バンバンお金をかき集めて、将来の収益のためにどんどん投資している段階なので、赤字なんてまったく気にしていないようですね。大規模な資金調達やいまの企業価値にも少し納得できた気がします。

未上場会社における企業価値ランキング第2位のパネイルってどんな会社?

今朝の日経新聞では、NEXTユニコーンと題して日本の未上場企業の企業家価値ランキングが掲載されておりました

vdata.nikkei.com

 

その中でよく名前を目にするプリファード・ネットワークスの次にパネイルという会社が2位でランクイン(801億円)してましたが、当方不勉強でなんの会社か全くわからず、良い機会なので簡単に調べてみることにしました。

 

corp.panair.jp

【パネイル】

2012年創業。現在従業員は115名。資本金は約31億円。

事業内容は

・次世代型エネルギー流通基幹システム「パネイルクラウド(Panair Cloud)」の運営開発

・小売電気事業者等に対する業務支援

・小売電気事業(登録番号:A0215)

とHP上で説明されておりました。

自社でも小売り電力小売業者として事業を行う一方、Panair Cloudというシステムを開発し、電力小売り事業者の電力流通コストを削減する営業支援を行っている会社みたいです。電力自由化に目を付けて、コスト競争力の強化が必要になってくる電力業界に営業支援クラウドツールでサポートするという発想は、シンプルで理にかなったアイデアに思います。

日経記事では、「電力会社の業務は需給管理や法人向けの料金見積りなど手作業が多い。AIでシステムの運用コストを下げるサービスの人気が高まると判断した。」と出てましたが、レガシー産業における手が入ってこなかった業務フローの自動化は、一度導入実績を作ることが出来れば、そこにはブルーオーシャンが拡がっていますし、費用の削減は決算上PLに大きくヒットするので市場にも受け入れられやすいアドバンテージにもなり、良い所づくめな気がします(最初に受け入れられるまでがめちゃ大変なんでしょうけど。。。)

 

彼らが行う営業支援は、非常にシンプルで今まで業界慣習的に手作業、人間の目、判断で行われてきた作業を全てビックデータとAIにやってもらおうという発想。

従来の電力小売会社では、電力の供給量と消費電力量を人の目でエクセルで管理していたり、個々の消費者への請求書を一枚一枚算出したり、そういった細かい非効率を現場に寄り添いAIとビッグデータを活用して可能な限り自動化をするのが「Panair Cloud」の一つの特徴とのことです。

 

決算書が拾えなかったため、定量面のコメントはできませんが、この企業は日本の電力自由化の歴史を学ばないと真の企業価値は実感できない気がしています。欧米と比べてただでさえ遅かった日本の電力自由化は、2016年4月に実施されたもの、時々CMで大手ガス会社を見かけるぐらいで多様な参入を許していない業界というのが個人的な印象です。

そのような業界に気軽に新規参入できるよう電力供給体制の構築に大きな役割を担うことが出来ているからこその、この801億円という企業価値だと思いますが、これ以上は電力小売業界の現状まで深く勉強していく必要が出てきますね。

とりあえず今後どうブレークスルーしていくのか、注目していきたいと思います。

ソフトバンク親子上場の狙いとは?

(日経新聞)2018年12月16日(朝刊)ソフトバンクが上場(ニュースフォーキャスト)

ソフトバンク(SB)が19日に東京証券取引所第一部に上場する。新規投資株式公開(IPO)に伴い売り出される株式の金額は最大で約2兆6460億円と1980年代後半のNTTを上回り日本で最大規模となる。

 

今回上場することになるSBは、東証一部に上場しているソフトバンクグループ(SBG)の連結子会社である。SBの主要事業は国内の携帯電話サービス「ソフトバンク」を運営するグループの堅実な稼ぎ頭であり、安定した通信料収入が見込めるが成長性への見方は難しい。

足元2019年度3月期の連結業績は売上高が前期比3%増の3兆7000億円、純利益は5%増の4200億円を見込んでいるようだ。業績のリスクは政府からの通信料の値下げ圧力や楽天の新規参入により競争の激化が挙げられる。上場に伴いSBGは発行済み株式の約37%を市場に売り出し、SBGは引き続き筆頭株主として残ることとなる。

 

今回のSB上場によってSBGが得ることが出来るのは、もちろん2兆6000億にも上るCash inである。ソフトバンクグループはグループ内のファンドから多額の出資を行っており、D/Eレシオは良化傾向にあるものの2017年度では3.0。有利子負債と15兆と大きな負債を抱えている。今回のSBのIPOにより財務基盤を傷めず資金調達が可能になるが、親子上場はSBGから見るとSBの少数株主への利益流出にも繋がるし、特に子会社の上場については、親会社に依存することなく、独立した事業運営が可能か否かが、審査上重要となるため、ヒト、モノ、カネ、情報等すべてにおいて、一定の定量的な数字をクリアしなければならず、それなりにハードルが高い項目もある。これらのデメリットとトレードオフしてまで上場させたかった意図はどこにあるのか。

 

ソフトバンクの2018年2Qの決算開示資料では、

  • 資金調達の多様化
  • SB株式価値の顕在化

となっている。

 https://cdn.group.softbank/corp/set/data/irinfo/presentations/analyst/pdf/2018/investor_20181107_01.pdf

 

ここでコングロマリット・ディスカウントという考え方が出てくる。

 投資家が注目するコングロマリット・ディスカウントとは

 コングロマリットディカウントとは、コングロマリット企業が多角的に事業ポートフォリオを組むことでリスク分担を行っているものの、株主視点に立つと事業の優位性の見極めが困難になり、またリスク分担は株主自身で分散投資することで担保可能であるため企業自身のシナジーを見いだせない分散投資を歓迎しないといった投資家が多いために、株価が割安になってしまうことを指す。

 

理由1:コングロマリットの事業すべてを精査して投資判断できる投資家がいない。

企業への投資を判断する際、相互に関連しない事業の業績について、投資家自身あるいはアナリストが時間と手間をかけて分析することにメリットがないと考え、評価が上がらない。

 

理由2.:企業内のリスク分散に投資するよりも、投資家自らの投資で、リスク分散することを好む。

企業にしてみれば、事業の多角化はリスク分散になり得るが、その一方、投資家からすればAというコングロマリットへ投資すると、業績の良い事業に限らず採算のとれない事業にも投資家のリソースを割くことになり非効率となる。

 

理由3. 経営リソースが分散され、個別に抽出すると競争優位を持てない事業が多いから、コングロマリットの企業全体でみればリスク分散されていても、個々の事業体を取り出してみると必ずしも業界で競争優位を持てていないというケースがみられる。

 

SB社は日本の携帯電話事業のbig3の一角であり、通信料という安定収入を持つ優良企業であるのにも関わらず、SBG株価にその企業価値が反映されていないとソフトバンク経営陣は判断したのかもしれない。

しかしながら、ソフトバンクビジョンファンドが好調な今、国内稼ぎ頭の持ち分比率を下げてまで新たな資金調達先を創出する理由が、SB株価の顕在化という理由だけで説明がつくとは思えず、現状の足りない頭ではこれが限界であった。

 

時間があるときにでももう少し集中的にソフトバンクについて調べてみたい。

 

日立、送配電8000億円で買収 スイスABB部門 世界首位に浮上へ

 

日経新聞日立、送配電8000億円で買収 スイスABB部門 世界首位に浮上へ

www.nikkei.com

  

この前の記事にて、日立の財務施策、国内外グループ会社の整理状況から、大きな投資が控えているのではと書いておりましたが、まさかこんなに早く実行されるとは思いませんでした。

gmgmtai.hatenablog.com

 

日立とABBは現在、大詰めの条件交渉を続けているということで、買収金額は6000億~8000億円の間に落ち着きそうな模様。一か月前ほどのニュースリリースではバリュエーション1兆4700億と出ていたので、価値評価の見直しか持ち分比率の変更があったのか日経記事での最終の着地が8,000億円となってました。

日立は12日開催の取締役会で買収方針を確認し、早ければ月内にも最終合意する見通で、スキームは、ABBが対象事業を分社化し、分社した新会社に日立が段階的に出資、数年かけて完全子会社化する方針とのことです。

 

日立、ABBと部門買収協議 英紙報道 パワーグリッド一部か全体

www.sankeibiz.jp

日立製作所は、スイスのABBのパワーグリッド部門の一部あるいは全体を買収することで非公式の協議を行っている。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が複数の関係者を引用して伝えた。アナリストらは同部門の価値を約130億ドル(約1兆4700億円)と評価している。

 

海外のパワーグリッド事業は、いわゆる電気のプラットフォーム産業であり、変電所建設、電線敷設、さらに設備運営を受託し電力網全体の需要と供給を調整する役割を担っています。いま欧州を中心に注目されている太陽光発電風力発電は天候で発電量が大きく変わるため、ITを使った高度な制御システムの需要や、今後は高度な省エネを実現するスマートグリッド(次世代送電網)のニーズが高まっていくことも予想されるため、送配電網を活用した「IoT」事業との相乗効果もターゲットになっていくでしょう。

 現在日立の電力・エネルギー事業は発電設備、送配電・変電設備、再生エネなどを幅広く手掛け、18年3月期の売上高4509億円で営業利益率は6%弱。今後の海外展開や日本での電力自由化を見据え発電事業ではなく、送電網事業を強化することは電力ビジネスの次世代化に不可欠な要素だったと考えられます。

 

ちょこっとだけABBのIRページものぞいてみましたが、かれらの注力分野はどうやら産業用ロボットのようです。よってシナジーが見込めない送電線事業は売却し、工場自動化やロボットといった得意分野に経営資源を集中すると考えられます。

 

ABB公表資料

https://resources.news.e.abb.com/attachments/published/9046/en-US/7B6C920DEB45/ABB-Q3-2018-press-release-English.pdf

Our pioneering technology leadership is delivering solid results across all businesses, particularly in Robotics and Motion and Industrial Automation.

 

それにしても日立の経営企画?部門は楽しそうですねー。間接費カットの実行、営業利益率・ROA改善、からのコア事業を定義しそれ以外の部門はCashに変えて最後に大型投資の実行。まさに強い企業を作っていく一過程を体感できる現場でうらやましい限りです。

平成31年度税制改正大綱〜外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)〜

平成31年税制改正大綱について〜外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)①〜

 

今回は2018年12月14日に発表された税制改正大綱について、やっぱり翌日の朝刊で大きく取り上げられていたので、自分でも色々調べてみました。

多くの人が消費税や自動車税について興味を持っているかと思いますが、私は今回日経グローバル企業の目線に立ち、国際課税について②回に分けて取り上げていきたいと思います。

 

 

2018年12月14日に平成31年度税制大綱が発表された。消費増税に伴う軽減税率や自動車関連の減税等の生活関連分野がやはり注目されているが、2017年のアメリカでの大幅減税の余波を受け対応が注目されていた国際課税分野における外国子会社合算税制へも一部見直しが入ることになった。

2018年12月15日(土)朝刊では下記のとおりコメントされている。

 

トランプ政権による減税で米国の法人実効税率が20%代となったことにも対応。日本の「タックヘイブン(租税回避地)対策税制」は税負担率が30%を切る国の関連会社について、日本の親会社に合算して課税する。米国がタックスヘイブン扱いされて2重課税されることのないよう、米国での事業全体を踏まえて判断する仕組みにする。

 

今回は2回に分けて、何故今回の税制改正で外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の改正が実施されたのか、何が日本の企業にとって問題で、何が今回の改正によって解消されるのか、順に見ていきたいと思う。

 

1.外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)とは

まず外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)とはどのような税制なのか。

外国子会社合算税制とは日本企業がいわゆるタックスヘイブン国と言われる低税率国に租税回避目的で法人を設立し、低税率国で所得を獲得する動きを封じる税制度となっている。下記に財務省ホームページの内容を抜粋しているが、簡単に説明するとパナマのような無税国にペーパーカンパニーを設立し、そこで稼いだ所得を配当にて日本に還流させ、本邦で外国子会社配当益金不算入制度を利用しほとんど非課税で認識するというスキームを防ぐためにも、低税率国で実態のない会社が稼いだ所得に対して、それがパナマであろうがケイマン諸島であろうが、日本の法人税率で日本にて課税する制度である。

近年は日本企業によるクロスボーダーでの買収案件が増えてきている中で、海外に多くの子会社を持つ日本企業は、海外で節税スキームを組んでいたとしても、日本の外国子会社合算税制に引っかかってしまうことになる。

 

【外国子会社合算税制とは(財務省ホームページより)】

わが国の内国法人等が、実質的活動を伴わない外国子会社等を利用する等により、わが国の税負担を軽減・回避する行為に対処するため、外国子会社等がペーパー・カンパニー等である場合又は経済活動基準(注)のいずれかを満たさない場合には、その外国子会社等の所得に相当する金額について、内国法人等の所得とみなし、それを合算して課税(会社単位での合算課税)。

  (注)①事業基準(主たる事業が株式の保有等、一定の事業でないこと)

     ②実体基準(本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること)

     ③管理支配基準(本店所在地国において事業の管理、

支配及び運営を自ら行っていること)

     ④次のいずれかの基準

            (1) 所在地国基準 (主として本店所在地国で主たる事業を行っていること)

               ※ 下記以外の業種に適用

            (2) 非関連者基準 (主として関連者以外の者と取引を行っていること)

               ※ 卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業保険業、水運業、

      航空運送業、航空機貸付業の場合に適用

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/175.htm

 

 直近でもスプリントグループを買収したソフトバンク日産自動車が外国子会社合算税制による多額の追徴課税を受けている。

ソフトバンクのケースは、2013年に米携帯電話大手スプリントを、2014年に米携帯卸売り大手ブライトスターを買収した際、買収先の膨大なグループ会社を網羅的に把握できていなかったため、一部利益が無税国であるバミューダ諸島に流れていたことに気付かず、外国子会社合算税制の適用が漏れてしまっていたものである。

日産自動車の案件は、まだ詳細な情報が明らかにはなっていないが、どうやらこちらもバミューダ諸島に所在するグループの再保険会社が、外国子会社合算税制の対象にあたると国税局に指摘され、追徴を受けたようである。

 

ソフトバンク939億円申告漏れ 租税回避地の子会社分

https://www.asahi.com/articles/ASL4K4WBQL4KUTIL01G.html

ソフトバンクグループ(SBG、東京都港区)が東京国税局の税務調査を受け、2016年3月期までの4年間で約939億円の申告漏れを指摘されたことがわかった。買収した海外企業がタックスヘイブン租税回避地)に持っていた子会社の所得について、SBGの所得と合算すべきだと判断されたという。追徴税額は過少申告加算税を含め約37億円で、すでに修正申告したという。

 

日産、200億円申告漏れ 租税回避地の子会社所得巡り

https://www.asahi.com/articles/ASLC82W29LC8UTIL003.html

 タックスヘイブン租税回避地)にある子会社の税務処理をめぐり、日産自動車が東京国税局から2017年3月期に約200億円の申告漏れを指摘されたことがわかった。追徴課税(更正処分)は過少申告加算税を含め約50億円とみられる。同社は処分を不服として国税不服審判所に審査請求した。

 

このように数年前にパナマ文書が公開されたぐらいから世界的に租税回避行為が注目を浴びている中、日本の国税局でも本税制へに対する注目度が増してきていると考えられる。

2.米国での税制改正との関連性

その中で冒頭の米国の税制改正がどう影響してくるのかというと、税制改正の目玉としてトランプ大統領が満を持して実行したのが、米国の法人税率の減税である。州税と合わせて40%近くあった米国の法人税率をなんと25%まで低下させる決断をしたのであった。

これにより日本の米現地法人は減税の恩恵を享受出来ていたが、今回論じる外国子会社合算税制に大きな影響を与えることになってしまった。

誰もが予想しなかったトランプ大統領が誕生し、大規模の減税施策が発表される前の平成29年度税制改正にて、外国子会社合算税の対象となる海外の法人税率の範囲が30%未満まで押し上げられたのであった。従来は20%未満であった適用対象範囲が、現地で実体のないペーパーカンパニーであった場合は、制度適用対象範囲が30%未満まで引き上げられ制度全体の引き締めが強化された。

これにより予想もしなかった米国が日本の税制度から見るとタックスヘイブン国に該当することになり、米国で展開していた日本企業のビジネスが日本の国際税制の課税論議に挙がることになってしまったのであった。更にここで米国特有のビジネス形態が大きな問題となってくるのだが、それは第二弾にて記載することにする。

 

 

日立製作所、間接費を3年で1,000億円削減の狙いとは?

 初めましてしがないサラリーマンです。まだ自分の名前も何も決まっておりません。タイトルそのままですが、普段の会社員生活の中であまりにもアウトプットする機会がないため、なんとか絞り出すためにもブログを開設してみました。

 

ブログの仕様も書き方もど素人ですが少しづつ改善を加えて行きたいと考えております。まずはいつも買ってそれなりにしっかり読むものの、恐らくなんのためにもなっていなかった日経新聞土曜版の一記事を少し深読みし文書に纏めてみました。 

 

  1.  タイトル

日経新聞2018年12月8日(土)日立製作所、間接費を3年で1,000億円削減

  

  1. サマリー

日立製作所は2020年3月期から始まる3年間の中期経営計画で間接費を1,000億円削減する目標を盛り込む。具体的な施策としてはグループ会社の統合やIOTを活用する。2019年3月期の予想で8%売上高営業利益率を10%以上に引き上げることが狙い。

 

リーマンショック後の巨額最終赤字への転落を機に構造改革や事業売却を進めてきたがその延長線として間接費についてなお減らすことが出来る余地があると考えている。

  

 

  1. 本記事に対する視座

日立製作所における成長の指標がなぜ営業利益率なのか?

  

 

  1. 考えるポイント
  • 営業利益への10%代という目標設定
  • 中計のKPIにROAとCCC
  • 直近のExit事例(鉄道車両のリース会社、自動車部品製造会社の売却)

  

 

  1. 考察

初めに日立が2018年に発表した中期経営計画の進捗報告資料を確認してみると、「2021年中計でさらなる成長を目指す:調整後営業利益率10%超」と掲げていることから、本日経記事でのコメント内容と相違は見られない。ここからなぜ日立製作所が営業利益率を成長の指標として位置付けているのか考察していく。

  

まずは営業利益率の定義から考えていきたい。営業利益率の正確な名称は、売上高営業利益率であり、売上高と営業利益をシンプルな計算式に当てはめれば営業利益率を求めることができる。

 

営業利益率の求め方

営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高 × 100

 

文字通り売上高に対する営業利益の割合を計算しているため、同じ金額の売上高をあげている企業であっても、営業利益率の高い企業の方が、生まれる営業利益も大きくなる。

次に営業利益とは、商売活動によって稼いだ利益である。

 

営業利益とは

営業利益 = 売上高 - 商品のコスト(売上原価)- 販売活動等のコスト(販売費及び一般管理費

  

このように、営業利益は売上高をもとに商売にかかるコストを差し引くことで計算することが出来る。よって営業利益率は、「いかに効率的に売上高から営業利益を絞り出しているか?」を測ることが出来るツールとして扱うことが出来る。売上高が同じ100万円の企業であっても、営業利益率が20%か1%かによって、営業利益の金額は20倍の差がつき、結果として、手元にのこる資金残高(Cashフロー)は大きく異なってくることになる。

このことから日立製作所は、営業利益率を向上させることによって本業の効率性と稼ぐ力を強化する経営方針を取っていると推測できる。

  

またトップメッセージでも「KPIとして掲げたROA(Return on Assets:総資産当期利益率)、CCC(Cash Conversion Cycle:運転資金手持日数)なども「2018中期経営計画」の目標を1年前倒しで達成、マーケットの皆様のご期待に応えることができたものと考えております。」というコメントが見られることから、企業としての目標に効率性とキャッシュの創出力の強化に力を入れていることがうかがえる。

  

  • KPI

key performance indicator の略で、企業目標の達成度を評価するための

主要業績評価指標のことをいう。

総資産利益率とも言われ、事業に投下されている資産が利益をどれだけ

獲得したかを示す指標。また、ROAは事業の効率性と収益性を同時に示す

指標(後述しています)としても知られている。

  • CCC

企業が原材料や商品仕入などへ現金を投入してから最終的に現金化されるまでの日数を示し、資金効率を見るための指標。

  

ではこれらの施策の目的である「キャッシュの創出」は、どのような意図を持っているのだろうか。まず一つ、非常に分かりやすいのは財務体質の強化のために負債の返済に充てられていることがここ数年のD/Eレシオから見て取れる。実際ここ数年D/Eレシオは、低下傾向にあり2016年度では0.87であったが、2018年度見通しでは0.23まで低下している。

  

  • DEレシオ(Debt Equity Ratio 負債資本倍率)

企業の財務の健全性をはかるための指標で、負債(Debt)を自己資本(Equity)で割って計算する。 ゆえに、負債が自己資本の何倍あるかがわかる指標となる。

  

D/Eレシオが0.23まで低下してきたいま、創出されたキャッシュが次に向かう先は新規投資であると考えられる。

トップメッセージの冒頭に「『IoT時代のイノベーションパートナー』として、さらなる飛躍に向けたアチェンジを図る日立にご期待ください」とあるように、現在日立は選択と集中によるコア事業の強化を推進している。その事実は、ここ最近の複数のExit案件を見ていてもうかがえることが出来る。

  

  • 日立、クラリオンの全株式売却を発表。仏フォルシアの傘下に

2019年3月期個別決算で売却益約780億円を計上予定。

car.watch.impress.co.jp

 

商用車用パワーステアリング事業にて、小型・軽量・高出力な油圧アシストタイプのインテグラパワーステアリングギアを製造・販売している。今回、同社が設立する新会社へ同事業を吸収分割した後、新会社の株式をクノールブレムゼ社の香港子会社へ譲渡する。

https://response.jp/article/2018/12/07/316963

  

今後の日立は、かつての総合電機事業のような多角化経営ではなく、自らのコアビジネスを見定めながら、かつ重厚長大産業からLUMADAというデジタルイノベーション事業やソフトウェア事業、デジタルトランスフォーメーション事業等市場の成長性が高い事業にシフトしていくことで、今後の成長曲線を描いていこうとしていることが読み取れる。

そのためにも、これからチャレンジしていかなければならない大型M&Aを見据えた投資キャッシュ創出のためにも営業利益率改善がまずは急務とされていると考えることが出来るだろう。

  

日立IRページ

www.hitachi.co.jp

 

米国減税による日本企業への影響(繰り延べ税金負債の取り崩しについて)

トランプ米大統領主導で2018年1月に発行された税制改革法は、日本企業の収益や事業戦略に大きな影響を及ぼすことが考えられる。

 

今回の税制改正の最も大きなポイントは、法人税率の大幅な低下である。およそ40%近くあった米国の法人税率が、26%近くまで引き下がることになり、日系企業の税負担も3分1程度減少することになる。

 

今回の減税によりまず2017年度決算に影響を与えるのが、繰り延べ税金負債の減少による一過性の取り崩し益だ。税率の減少により各社にて計上されていた将来の税負担金額の増加分を計上していた繰り延べ税金負債が減少することにより、その反動による戻り益が発生する。

 

2017年度まで日系企業において繰り延べ税金負債が膨らんだ理由としては、米国の投資促進政策が背景にある。固定資産を取得した初年度に50%まで減価償却費を税務上の損金に算入できるという制度である。これにより投資後の税金金額を圧縮し、税金を後払いする効果を発生させることが出来るのだ。

この投資促進政策による税金費用の繰り延べにより、会計上繰り延べ税金負債が計上されることになる。

 

今回の取り崩し益を仕分けにまとめると下記のとおりである。

 

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今回の繰り延べ税金負債の取り崩し益によって、下記日系メーカーの純利益に大きな影響を与えている。

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自動車業界に影響が出ている理由としては、彼らのビジネスモデルが、リース契約による自動車購入が一般的であり、一度各社で多額の資産計上を可能にしているため会計より先んじて発生した減価償却費の損金算入により、大きく繰り延べ税金負債が計上される結果となっている。

 

当期純利益に1000億以上の影響を与える繰り延べ税金負債の取り崩し益ではあるが、Cashを伴わない会計上の収益であるため、本業の収益基盤の改善によるものではないということに留意すべきである。今後米港における減税メリットをどう生かしていくのか、日系企業の動きに注目していきたい。

  

※①株主などに作る企業会計と、税務当局向けに作成する税務関係の会計税務差異を調整するための会計手法。収益や費用を認識するタイミングが会計上と税務上で異なる際に、税金金額による税後損益の変動を平準化することが出来る。