一歩踏み込む日経新聞まとめブログ

何気なく日経新聞を流し読みしていたサラリーマンが、あまりのアウトプット機会の少なさから、記事の内容に一歩踏み込んで色々書いてみようと始めたブログです。

米国減税による日本企業への影響(繰り延べ税金負債の取り崩しについて)

トランプ米大統領主導で2018年1月に発行された税制改革法は、日本企業の収益や事業戦略に大きな影響を及ぼすことが考えられる。

 

今回の税制改正の最も大きなポイントは、法人税率の大幅な低下である。およそ40%近くあった米国の法人税率が、26%近くまで引き下がることになり、日系企業の税負担も3分1程度減少することになる。

 

今回の減税によりまず2017年度決算に影響を与えるのが、繰り延べ税金負債の減少による一過性の取り崩し益だ。税率の減少により各社にて計上されていた将来の税負担金額の増加分を計上していた繰り延べ税金負債が減少することにより、その反動による戻り益が発生する。

 

2017年度まで日系企業において繰り延べ税金負債が膨らんだ理由としては、米国の投資促進政策が背景にある。固定資産を取得した初年度に50%まで減価償却費を税務上の損金に算入できるという制度である。これにより投資後の税金金額を圧縮し、税金を後払いする効果を発生させることが出来るのだ。

この投資促進政策による税金費用の繰り延べにより、会計上繰り延べ税金負債が計上されることになる。

 

今回の取り崩し益を仕分けにまとめると下記のとおりである。

 

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今回の繰り延べ税金負債の取り崩し益によって、下記日系メーカーの純利益に大きな影響を与えている。

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自動車業界に影響が出ている理由としては、彼らのビジネスモデルが、リース契約による自動車購入が一般的であり、一度各社で多額の資産計上を可能にしているため会計より先んじて発生した減価償却費の損金算入により、大きく繰り延べ税金負債が計上される結果となっている。

 

当期純利益に1000億以上の影響を与える繰り延べ税金負債の取り崩し益ではあるが、Cashを伴わない会計上の収益であるため、本業の収益基盤の改善によるものではないということに留意すべきである。今後米港における減税メリットをどう生かしていくのか、日系企業の動きに注目していきたい。

  

※①株主などに作る企業会計と、税務当局向けに作成する税務関係の会計税務差異を調整するための会計手法。収益や費用を認識するタイミングが会計上と税務上で異なる際に、税金金額による税後損益の変動を平準化することが出来る。