日立製作所、間接費を3年で1,000億円削減の狙いとは?
初めましてしがないサラリーマンです。まだ自分の名前も何も決まっておりません。タイトルそのままですが、普段の会社員生活の中であまりにもアウトプットする機会がないため、なんとか絞り出すためにもブログを開設してみました。
ブログの仕様も書き方もど素人ですが少しづつ改善を加えて行きたいと考えております。まずはいつも買ってそれなりにしっかり読むものの、恐らくなんのためにもなっていなかった日経新聞土曜版の一記事を少し深読みし文書に纏めてみました。
- タイトル
日経新聞2018年12月8日(土)日立製作所、間接費を3年で1,000億円削減
- サマリー
日立製作所は2020年3月期から始まる3年間の中期経営計画で間接費を1,000億円削減する目標を盛り込む。具体的な施策としてはグループ会社の統合やIOTを活用する。2019年3月期の予想で8%売上高営業利益率を10%以上に引き上げることが狙い。
リーマンショック後の巨額最終赤字への転落を機に構造改革や事業売却を進めてきたがその延長線として間接費についてなお減らすことが出来る余地があると考えている。
- 本記事に対する視座
日立製作所における成長の指標がなぜ営業利益率なのか?
- 考えるポイント
- 考察
初めに日立が2018年に発表した中期経営計画の進捗報告資料を確認してみると、「2021年中計でさらなる成長を目指す:調整後営業利益率10%超」と掲げていることから、本日経記事でのコメント内容と相違は見られない。ここからなぜ日立製作所が営業利益率を成長の指標として位置付けているのか考察していく。
まずは営業利益率の定義から考えていきたい。営業利益率の正確な名称は、売上高営業利益率であり、売上高と営業利益をシンプルな計算式に当てはめれば営業利益率を求めることができる。
営業利益率の求め方
営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
文字通り売上高に対する営業利益の割合を計算しているため、同じ金額の売上高をあげている企業であっても、営業利益率の高い企業の方が、生まれる営業利益も大きくなる。
次に営業利益とは、商売活動によって稼いだ利益である。
営業利益とは
営業利益 = 売上高 - 商品のコスト(売上原価)- 販売活動等のコスト(販売費及び一般管理費)
このように、営業利益は売上高をもとに商売にかかるコストを差し引くことで計算することが出来る。よって営業利益率は、「いかに効率的に売上高から営業利益を絞り出しているか?」を測ることが出来るツールとして扱うことが出来る。売上高が同じ100万円の企業であっても、営業利益率が20%か1%かによって、営業利益の金額は20倍の差がつき、結果として、手元にのこる資金残高(Cashフロー)は大きく異なってくることになる。
このことから日立製作所は、営業利益率を向上させることによって本業の効率性と稼ぐ力を強化する経営方針を取っていると推測できる。
またトップメッセージでも「KPIとして掲げたROA(Return on Assets:総資産当期利益率)、CCC(Cash Conversion Cycle:運転資金手持日数)なども「2018中期経営計画」の目標を1年前倒しで達成、マーケットの皆様のご期待に応えることができたものと考えております。」というコメントが見られることから、企業としての目標に効率性とキャッシュの創出力の強化に力を入れていることがうかがえる。
- KPI
key performance indicator の略で、企業目標の達成度を評価するための
主要業績評価指標のことをいう。
総資産利益率とも言われ、事業に投下されている資産が利益をどれだけ
獲得したかを示す指標。また、ROAは事業の効率性と収益性を同時に示す
指標(後述しています)としても知られている。
- CCC
企業が原材料や商品仕入などへ現金を投入してから最終的に現金化されるまでの日数を示し、資金効率を見るための指標。
ではこれらの施策の目的である「キャッシュの創出」は、どのような意図を持っているのだろうか。まず一つ、非常に分かりやすいのは財務体質の強化のために負債の返済に充てられていることがここ数年のD/Eレシオから見て取れる。実際ここ数年D/Eレシオは、低下傾向にあり2016年度では0.87であったが、2018年度見通しでは0.23まで低下している。
- DEレシオ(Debt Equity Ratio 負債資本倍率)
企業の財務の健全性をはかるための指標で、負債(Debt)を自己資本(Equity)で割って計算する。 ゆえに、負債が自己資本の何倍あるかがわかる指標となる。
D/Eレシオが0.23まで低下してきたいま、創出されたキャッシュが次に向かう先は新規投資であると考えられる。
トップメッセージの冒頭に「『IoT時代のイノベーションパートナー』として、さらなる飛躍に向けたギアチェンジを図る日立にご期待ください」とあるように、現在日立は選択と集中によるコア事業の強化を推進している。その事実は、ここ最近の複数のExit案件を見ていてもうかがえることが出来る。
- 日立、クラリオンの全株式売却を発表。仏フォルシアの傘下に
2019年3月期個別決算で売却益約780億円を計上予定。
商用車用パワーステアリング事業にて、小型・軽量・高出力な油圧アシストタイプのインテグラルパワーステアリングギアを製造・販売している。今回、同社が設立する新会社へ同事業を吸収分割した後、新会社の株式をクノールブレムゼ社の香港子会社へ譲渡する。
https://response.jp/article/2018/12/07/316963
今後の日立は、かつての総合電機事業のような多角化経営ではなく、自らのコアビジネスを見定めながら、かつ重厚長大産業からLUMADAというデジタルイノベーション事業やソフトウェア事業、デジタルトランスフォーメーション事業等市場の成長性が高い事業にシフトしていくことで、今後の成長曲線を描いていこうとしていることが読み取れる。
そのためにも、これからチャレンジしていかなければならない大型M&Aを見据えた投資キャッシュ創出のためにも営業利益率改善がまずは急務とされていると考えることが出来るだろう。
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