一歩踏み込む日経新聞まとめブログ

何気なく日経新聞を流し読みしていたサラリーマンが、あまりのアウトプット機会の少なさから、記事の内容に一歩踏み込んで色々書いてみようと始めたブログです。

平成31年度税制改正大綱〜外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)〜

平成31年税制改正大綱について〜外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)①〜

 

今回は2018年12月14日に発表された税制改正大綱について、やっぱり翌日の朝刊で大きく取り上げられていたので、自分でも色々調べてみました。

多くの人が消費税や自動車税について興味を持っているかと思いますが、私は今回日経グローバル企業の目線に立ち、国際課税について②回に分けて取り上げていきたいと思います。

 

 

2018年12月14日に平成31年度税制大綱が発表された。消費増税に伴う軽減税率や自動車関連の減税等の生活関連分野がやはり注目されているが、2017年のアメリカでの大幅減税の余波を受け対応が注目されていた国際課税分野における外国子会社合算税制へも一部見直しが入ることになった。

2018年12月15日(土)朝刊では下記のとおりコメントされている。

 

トランプ政権による減税で米国の法人実効税率が20%代となったことにも対応。日本の「タックヘイブン(租税回避地)対策税制」は税負担率が30%を切る国の関連会社について、日本の親会社に合算して課税する。米国がタックスヘイブン扱いされて2重課税されることのないよう、米国での事業全体を踏まえて判断する仕組みにする。

 

今回は2回に分けて、何故今回の税制改正で外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の改正が実施されたのか、何が日本の企業にとって問題で、何が今回の改正によって解消されるのか、順に見ていきたいと思う。

 

1.外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)とは

まず外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)とはどのような税制なのか。

外国子会社合算税制とは日本企業がいわゆるタックスヘイブン国と言われる低税率国に租税回避目的で法人を設立し、低税率国で所得を獲得する動きを封じる税制度となっている。下記に財務省ホームページの内容を抜粋しているが、簡単に説明するとパナマのような無税国にペーパーカンパニーを設立し、そこで稼いだ所得を配当にて日本に還流させ、本邦で外国子会社配当益金不算入制度を利用しほとんど非課税で認識するというスキームを防ぐためにも、低税率国で実態のない会社が稼いだ所得に対して、それがパナマであろうがケイマン諸島であろうが、日本の法人税率で日本にて課税する制度である。

近年は日本企業によるクロスボーダーでの買収案件が増えてきている中で、海外に多くの子会社を持つ日本企業は、海外で節税スキームを組んでいたとしても、日本の外国子会社合算税制に引っかかってしまうことになる。

 

【外国子会社合算税制とは(財務省ホームページより)】

わが国の内国法人等が、実質的活動を伴わない外国子会社等を利用する等により、わが国の税負担を軽減・回避する行為に対処するため、外国子会社等がペーパー・カンパニー等である場合又は経済活動基準(注)のいずれかを満たさない場合には、その外国子会社等の所得に相当する金額について、内国法人等の所得とみなし、それを合算して課税(会社単位での合算課税)。

  (注)①事業基準(主たる事業が株式の保有等、一定の事業でないこと)

     ②実体基準(本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること)

     ③管理支配基準(本店所在地国において事業の管理、

支配及び運営を自ら行っていること)

     ④次のいずれかの基準

            (1) 所在地国基準 (主として本店所在地国で主たる事業を行っていること)

               ※ 下記以外の業種に適用

            (2) 非関連者基準 (主として関連者以外の者と取引を行っていること)

               ※ 卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業保険業、水運業、

      航空運送業、航空機貸付業の場合に適用

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/175.htm

 

 直近でもスプリントグループを買収したソフトバンク日産自動車が外国子会社合算税制による多額の追徴課税を受けている。

ソフトバンクのケースは、2013年に米携帯電話大手スプリントを、2014年に米携帯卸売り大手ブライトスターを買収した際、買収先の膨大なグループ会社を網羅的に把握できていなかったため、一部利益が無税国であるバミューダ諸島に流れていたことに気付かず、外国子会社合算税制の適用が漏れてしまっていたものである。

日産自動車の案件は、まだ詳細な情報が明らかにはなっていないが、どうやらこちらもバミューダ諸島に所在するグループの再保険会社が、外国子会社合算税制の対象にあたると国税局に指摘され、追徴を受けたようである。

 

ソフトバンク939億円申告漏れ 租税回避地の子会社分

https://www.asahi.com/articles/ASL4K4WBQL4KUTIL01G.html

ソフトバンクグループ(SBG、東京都港区)が東京国税局の税務調査を受け、2016年3月期までの4年間で約939億円の申告漏れを指摘されたことがわかった。買収した海外企業がタックスヘイブン租税回避地)に持っていた子会社の所得について、SBGの所得と合算すべきだと判断されたという。追徴税額は過少申告加算税を含め約37億円で、すでに修正申告したという。

 

日産、200億円申告漏れ 租税回避地の子会社所得巡り

https://www.asahi.com/articles/ASLC82W29LC8UTIL003.html

 タックスヘイブン租税回避地)にある子会社の税務処理をめぐり、日産自動車が東京国税局から2017年3月期に約200億円の申告漏れを指摘されたことがわかった。追徴課税(更正処分)は過少申告加算税を含め約50億円とみられる。同社は処分を不服として国税不服審判所に審査請求した。

 

このように数年前にパナマ文書が公開されたぐらいから世界的に租税回避行為が注目を浴びている中、日本の国税局でも本税制へに対する注目度が増してきていると考えられる。

2.米国での税制改正との関連性

その中で冒頭の米国の税制改正がどう影響してくるのかというと、税制改正の目玉としてトランプ大統領が満を持して実行したのが、米国の法人税率の減税である。州税と合わせて40%近くあった米国の法人税率をなんと25%まで低下させる決断をしたのであった。

これにより日本の米現地法人は減税の恩恵を享受出来ていたが、今回論じる外国子会社合算税制に大きな影響を与えることになってしまった。

誰もが予想しなかったトランプ大統領が誕生し、大規模の減税施策が発表される前の平成29年度税制改正にて、外国子会社合算税の対象となる海外の法人税率の範囲が30%未満まで押し上げられたのであった。従来は20%未満であった適用対象範囲が、現地で実体のないペーパーカンパニーであった場合は、制度適用対象範囲が30%未満まで引き上げられ制度全体の引き締めが強化された。

これにより予想もしなかった米国が日本の税制度から見るとタックスヘイブン国に該当することになり、米国で展開していた日本企業のビジネスが日本の国際税制の課税論議に挙がることになってしまったのであった。更にここで米国特有のビジネス形態が大きな問題となってくるのだが、それは第二弾にて記載することにする。