一歩踏み込む日経新聞まとめブログ

何気なく日経新聞を流し読みしていたサラリーマンが、あまりのアウトプット機会の少なさから、記事の内容に一歩踏み込んで色々書いてみようと始めたブログです。

ソフトバンク親子上場の狙いとは?

(日経新聞)2018年12月16日(朝刊)ソフトバンクが上場(ニュースフォーキャスト)

ソフトバンク(SB)が19日に東京証券取引所第一部に上場する。新規投資株式公開(IPO)に伴い売り出される株式の金額は最大で約2兆6460億円と1980年代後半のNTTを上回り日本で最大規模となる。

 

今回上場することになるSBは、東証一部に上場しているソフトバンクグループ(SBG)の連結子会社である。SBの主要事業は国内の携帯電話サービス「ソフトバンク」を運営するグループの堅実な稼ぎ頭であり、安定した通信料収入が見込めるが成長性への見方は難しい。

足元2019年度3月期の連結業績は売上高が前期比3%増の3兆7000億円、純利益は5%増の4200億円を見込んでいるようだ。業績のリスクは政府からの通信料の値下げ圧力や楽天の新規参入により競争の激化が挙げられる。上場に伴いSBGは発行済み株式の約37%を市場に売り出し、SBGは引き続き筆頭株主として残ることとなる。

 

今回のSB上場によってSBGが得ることが出来るのは、もちろん2兆6000億にも上るCash inである。ソフトバンクグループはグループ内のファンドから多額の出資を行っており、D/Eレシオは良化傾向にあるものの2017年度では3.0。有利子負債と15兆と大きな負債を抱えている。今回のSBのIPOにより財務基盤を傷めず資金調達が可能になるが、親子上場はSBGから見るとSBの少数株主への利益流出にも繋がるし、特に子会社の上場については、親会社に依存することなく、独立した事業運営が可能か否かが、審査上重要となるため、ヒト、モノ、カネ、情報等すべてにおいて、一定の定量的な数字をクリアしなければならず、それなりにハードルが高い項目もある。これらのデメリットとトレードオフしてまで上場させたかった意図はどこにあるのか。

 

ソフトバンクの2018年2Qの決算開示資料では、

  • 資金調達の多様化
  • SB株式価値の顕在化

となっている。

 https://cdn.group.softbank/corp/set/data/irinfo/presentations/analyst/pdf/2018/investor_20181107_01.pdf

 

ここでコングロマリット・ディスカウントという考え方が出てくる。

 投資家が注目するコングロマリット・ディスカウントとは

 コングロマリットディカウントとは、コングロマリット企業が多角的に事業ポートフォリオを組むことでリスク分担を行っているものの、株主視点に立つと事業の優位性の見極めが困難になり、またリスク分担は株主自身で分散投資することで担保可能であるため企業自身のシナジーを見いだせない分散投資を歓迎しないといった投資家が多いために、株価が割安になってしまうことを指す。

 

理由1:コングロマリットの事業すべてを精査して投資判断できる投資家がいない。

企業への投資を判断する際、相互に関連しない事業の業績について、投資家自身あるいはアナリストが時間と手間をかけて分析することにメリットがないと考え、評価が上がらない。

 

理由2.:企業内のリスク分散に投資するよりも、投資家自らの投資で、リスク分散することを好む。

企業にしてみれば、事業の多角化はリスク分散になり得るが、その一方、投資家からすればAというコングロマリットへ投資すると、業績の良い事業に限らず採算のとれない事業にも投資家のリソースを割くことになり非効率となる。

 

理由3. 経営リソースが分散され、個別に抽出すると競争優位を持てない事業が多いから、コングロマリットの企業全体でみればリスク分散されていても、個々の事業体を取り出してみると必ずしも業界で競争優位を持てていないというケースがみられる。

 

SB社は日本の携帯電話事業のbig3の一角であり、通信料という安定収入を持つ優良企業であるのにも関わらず、SBG株価にその企業価値が反映されていないとソフトバンク経営陣は判断したのかもしれない。

しかしながら、ソフトバンクビジョンファンドが好調な今、国内稼ぎ頭の持ち分比率を下げてまで新たな資金調達先を創出する理由が、SB株価の顕在化という理由だけで説明がつくとは思えず、現状の足りない頭ではこれが限界であった。

 

時間があるときにでももう少し集中的にソフトバンクについて調べてみたい。