一歩踏み込む日経新聞まとめブログ

何気なく日経新聞を流し読みしていたサラリーマンが、あまりのアウトプット機会の少なさから、記事の内容に一歩踏み込んで色々書いてみようと始めたブログです。

WeWorkはなぜ赤字?

今朝の日経ではこのような記事が出てました。

www.nikkei.com

 記事自体は東京のオフィスの空室率がバブル期以来の低水準になる中で、ウィーワーク(WeWork)の空室率の低さと月会費の高さから賃料支払いの見立てが立てやすく、WeWorkが入るオフィスの物件価格が高騰しているという記事でした。ここ10ヶ月で8拠点開設しているウィーワークの勢いも強調されております。

 

自分が唯一気になったのはWeWorkのEBITDAが1億6800ドルの赤字だったいうコメントです。日経記事では会員から徴収する利用料がビルオーナーに支払う賃料を下回る「逆ざや」に陥る可能性もありとの記載があり、さすがにそれはないと思うのですが、ベンチャー特有の広告費が先行しているといえども入居率が98%と高水準を保っている中でまだ赤字にとどまっているのはどうしてなのか、今後どういう戦略があるのか考えてみることにしました。

(数多の資金調達と企業価値は追いません。)

 

EBITDAとは?

⇒税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益を指します。

EBITDA│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券

 

 WeWorkは世界23カ国77都市で287拠点のコワーキングスペースを運営し、起業家やフリーランサー、企業などに貸し出している企業です。

日本ではWeWork Japanが設立されており、米ニューヨークに拠点を置くWeWorkとソフトバンクグループが17年に設立した合弁企業となってます。

日本では2017年2月に初拠点をオープン。現在都内で6拠点を運営し、登録ユーザー数は約6000人(18年9月時点)まで増えており、18年内には横浜、大阪、福岡の3都市にも進出する他、19年内にさらに拠点を増やし、30拠点以上を展開する計画とのことです。

 

次にウィーワークの事業を整理します。自分の前提知識ではコワーキングスペースの運営による収益のみと思っていたのですが、シェアオフィスの開発から設計、提案まで自社でやっているようです。

また彼らは大企業とアライアンスを締結するケースが往々にしており、大きな収益源としております。その最たる例がマイクロソフトとであり、マイクロソフトの社員は皆世界中のWeWorkを使用でき、かつマイクロソフトは同社の開発する新しい商品やサービスのモニターとしてWeWorkのメンバーから募集する提携も結んでいるようです。

(その他顧客の例:セールスフォース、DELL、KPMG、TriNet、バカルディ、マリオット、GM等)

 

定量情報は下記記事から少し取ることが出来ました。

2018年上半期決算では売上が7億6400万ドル、損失が7億2300万ドルと記載されております。これらは前年度同時期(3億6200万ドルの売上に対して1億5400万ドルの損失)を上回っております。

また昨年度の年間売り上げが8億2200万ドルだったので。2018年上期ではそれに届く金額をたたき出し、かつ2017年の売上が会員数も売上と比例して2018年2Q時点で26万8000人、昨年同時期が12万8000人なので倍増以上となっており、高い成長率を感じさせます。

 https://www.recode.net/2018/8/9/17671874/wework-q2-revenue-profit-loss-membership-statistics-adam-neumann

 

また下記ロイターの記事ではCFOのコメントで、

「Chief Financial Officer Artie Minson said WeWork has a mismatch in its profit and loss statement because revenues from sites that will open later this year and in early 2019 lag months behind expenditures made now.」

とあるように、2018年は新オフィスの開設費用が先行しているため損が先に出ているとコメントされております。

http:// https://www.reuters.com/article/us-wework-results/wework-revenue-and-losses-surge-in-first-release-of-results-idUSKBN1KU2KI

 

よって今はまだ種まき状況であるため費用が先行しておりますが、現在開発・設計段階の新オフィスの稼働が始まり今の高い入居率を維持できれば、費用と収入が逆転する可能性が高く、今後は拠点が拡大すればするほど大きな収益にあげていくと予想することができます。

 

最初の自分のイメージでは、フリーランスのためのコワーキングスペース、シェアリングオフィス機能としてベンチャー含む企業のオフィス賃料削減のための一つの手段としか捉えておらず、なんで競合他社が現れないか不思議でした。

しかしながら、WeWorkは転貸業ではなく、物件の鑑定からリース契約、設計、施工、運用までを、一貫して自社で行い、そして世の中のワークスタイルや企業の経営スタイルにまで影響を与えうる点はこれまでの不動産賃貸業ではないと感じました。

現在絶好調のWeWorkですが、どうやら費用先行型ビジネスになるため、バンバンお金をかき集めて、将来の収益のためにどんどん投資している段階なので、赤字なんてまったく気にしていないようですね。大規模な資金調達やいまの企業価値にも少し納得できた気がします。